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映画の見どころとストーリーの考察を日々の鑑賞記録として綴るブログ

ナイトクローラー(2014):闇に潜む映像パパラッチの狂気

2014年に公開された『ナイトクローラー』は、ロサンゼルスの夜間に起こる犯罪や事故の映像を撮影してテレビ局に売り込むフリーランスのカメラマンを描いたサスペンス・スリラー映画です。

ダン・ギルロイの初監督作品で、主演のジェイク・ギレンホールの痩せこけた姿と狂気的な演技が話題となりました。批評家からも高い評価を受け、第87回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされました。興行収入は5000万ドルを超え、製作費850万ドルに対して大きな利益を上げました。

 

 

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

 

2. ストーリー紹介

ロサンゼルスで夜な夜な事件や事故の現場を撮影し、テレビ局に売り込むフリーランスの映像パパラッチ、通称ナイトクローラー。定職につかず盗品を売りさばいて生計を立てているルイス・ブルームは、ある日、高速道路で起きた事故現場で見かけたナイトクローラーに興味を持つ。

ルイスはカメラと無線機を手に入れて、自分もナイトクローラーとして活動を始め、次第にニュース番組のディレクターであるニナと取引するようになる。ルイスのナイトクローラーとして成功しようとする野心と、視聴率を取ることに執着するニナの利害があいまって、ルイスは次第に良心や倫理を無視して過激な映像を撮るようになっていく。

 

3. 邦題と原題の比較と解説

本作では原題もNightcrawlerで、邦題の「ナイトクローラー」も特に違いはありません。

4. 映画の見どころ

ジェイク・ギレンホールの狂気的な演技

ジェイク・ギレンホールの恐るべき怪演が見どころです。彼の演じるルイスは、自分の野望と利益のために人間性や道徳を捨てており、他人を利用や脅迫することに何の罪悪感も感じない、サイコパスですが、同時に魅力的でカリスマ性のあるキャラクターです。ジェイク・ギレンホールはこの映画のために約10キロの減量をし、目つきや話し方も変えて主人公のルイス・ブルームになりきっています。

ニュースメディアへの風刺と批判

この映画では、ニュース番組のディレクターであるニナ・ロミナが、視聴率を稼ぐために過激な映像を求めて、ルイスと取引するようになります。この映画は、「血が流れれば視聴率が上がる」というニュースメディアの倫理的な問題や、「観客が見たいものを見せる」という消費者社会の問題に対する、風刺や皮肉が込められています。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

ルイスはどうやってリックを見つけてアシスタントに採用したのか?

ルイスはナイトクローラーとして活動を始めてすぐに、助手としてリックという若者を雇います。ここでもルイスの非道っぷりが発揮されており、職がなくて困っているリックの足元を見て最低限の給料しか払わず、危険な仕事に巻き込みます。

ルイスはインターネット上の求人サイトに「Video Production News」という会社名を偽ってカメラマン募集広告を出していました。ルイスはリックを採用する理由として、彼が「経験がなくてもいい」という条件に合っていたことと、彼が「金に困っている」ということを見抜いたことを挙げています。

リックはルイスに従っているうちに、彼のやり方に疑問や不満を抱くようになりますが、ルイスは彼の意見や感情を無視します。ルイスとリックの関係は、社会的な格差や搾取を象徴おり、日本のブラック企業もこんな感じなんだろうなと思ってみていました。

 

ルイスの行動は犯罪にならないのか?

ルイスの行動は明らかに犯罪です。もともとルイスは社会のはみ出し者で、ナイトクローラーに興味を持つ前から、資材を盗んで売り捌く、警備員に暴行するなどの犯罪行為をしており、最初に買ったカメラと警察無線も盗んだ自転車を売って手にしたお金で購入しています。

ナイトクローラーになってからも、彼は事件や事故の現場に不法侵入したり、過激な映像を撮るために現場の証拠を改ざんしたり、警察や救急隊員の邪魔をしたりしています。ニーナに対しても恐喝に近い方法で服従させようとしたり、ライバルの車に細工をして事故を起こさせるという殺人未遂まで犯しています。

このようにして撮影した映像を買い取って放送するテレビ局の道徳観のなさ、さらにはそれを視聴率という数字を通して暗に要求している視聴者も含めて、この映画は風刺をしているのだと思います。


このようなフリーのカメラマンはアメリカで一般的な職業なのか?日本や他の国でも同じような仕事をしている人がいるのか?

このようなフリーのカメラマンはアメリカで実際に存在するようですが、さすがに近年はコンプライアンス意識の高まりもあって活動しづらくなっていると想像されます。

日本や他の国でも同じような仕事をしている人がいるかどうかは定かではありませんが、パパラッチや日本の週刊誌のカメラマンなどの職業は、ここまで過激ではないにしても、似たような職業なのかもしれません。


ルイスとニーナはどういう関係なのか?

ルイスとニーナはビジネスパートナーであり、男女の関係もあります。

しかし、彼らの関係は平等ではありません。ルイスはニーナに対して支配的であり、彼女を脅迫したり、利用したりしています。彼は自分の映像を高く売るために、ニーナに対して独占契約を結ばせたり、身体の関係を要求したりしています。

彼はニーナに対して「好きだ」と言っていますが、それは本当の愛情ではなく、自分の利益のために彼女をコントロールするための手段です。

ニーナはルイスに対して恐怖や嫌悪を感じながらも、彼の映像が視聴率を上げることに期待しており、彼女は自分のキャリアや地位を守るために、ルイスの要求に従っています。彼らは互いに利用し合っている関係なのです。

 

6. 映画の評価

★★★★☆(星4つ)

本作は、現代社会におけるメディアや消費者の問題を鋭く描き出しており、観客に伝えるメッセージが明確です。もちろん映画なので脚色は入っているとは思いますが、ジェイク・ギレンホールの演技や夜のロサンゼルスの街、事件や事故の現場を生々しく描く映像のリアリティは衝撃的で、尺の長さを感じさせない映画になっています。

 

『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』Tropa de Elite 2: O Inimigo Agora é Outro

『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』は、2010 年のブラジルのアクション スリラー映画です。2007 年に公開された『エリート スクワッド』の続編で、ブラジルのリオデジャネイロを舞台に、特殊部隊BOPEの元隊長ナシメントが、腐敗した政治と警察の闇に挑むアクション・スリラー映画です。

続編となる今作も批評家から絶賛され、ブラジル国内で歴代最高の興行収入を記録しました。最終的にノミネートは逃しましたが、第84回アカデミー賞外国語映画賞にブラジル代表として出品されました。

 

 

 

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

  • 製作・監督:ジョゼ・パジーリャ(José Padilha)
  • ロベルト・ナシメント:ヴァグネル・モーラ(Wagner Moura)
  • ディオゴ・フラガ:イランジール・サントス(Irandhir Santos)
  • アンドレ・マチアス:アンドレ・ハミロ(André Ramiro)
  • コマンダンテ・ファビオ:ミリェム・コルタス(Milhem Cortaz)
  • ロシャ:サンドロ・ロシャ(Sandro Rocha)
  • ロザーネ:マリア・ヒベイロ(Maria Ribeiro)

 

2. ストーリー紹介

前作から9年後、BOPE隊長となったナシメントは刑務所で起きた暴動を鎮圧するために出動しますが、部下であるマチアスが暴動主導者のベイラダを射殺してしまう。一度は左遷させられそうになったナシメントが、世論の人気に支えられ公安局の次官に任命されます。ナシメントはBOPEを拡大して麻薬組織を壊滅させるものの、その代わりに汚職警官ロシャが率いる民兵組織が台頭し、政治家とも癒着して麻薬組織よりも強大な腐敗システムができてしまいます。ナシメントは、元妻ロザーネの再婚相手で人権活動家で州議会議員のフラガと敵対しながらも、やがては協力し合いながら悪のシステムに立ち向かいます。

 

3. 邦題と原題の比較と解説

ブラジルの映画なので原題はポルトガル語で「Tropa de Elite 2: O Inimigo Agora é Outro」で、「エリート部隊2:今の敵は別のもの」という意味です。BOPEは当初麻薬組織の壊滅のために戦っていましたが、麻薬組織が一掃されたら今度は麻薬組織から賄賂をもらうことができなくなった汚職警官や消防士が民兵組織を作り、まさに『別の敵』の台頭を招いたことを表しています。

原題は映画のテーマをうまく表現しており、一方で邦題の『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』は分かりやすいものの、あまりにも安直で深みがないと感じます。

ちなみに英語のタイトルは『Elite Squad: The Enemy Within』(エリート部隊:内なる敵)となっており、こちらも現代とは少しニュアンスが異なるものの、邦題よりは原題に近いタイトルになっています。

 

4. 映画の見どころ

ヴァグネル・モーラの迫真の演技

ナシメント役のヴァグネル・モーラは、腐敗した治安組織に振り回されたり命を狙われる身の危険に会いながらも、自分の信念を貫く姿を見事に演じています。また前作のあとに離別した家族との関わり、元妻と再婚したフラガとの関係など、複雑な人間関係についても繊細に演じています。

ちなみにヴァグネル・モーラはNetflixオリジナルドラマの『ナルコス』でコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバル役といった今作とは真逆の役を演じています。また本作の監督であるジョゼ・パジーリャも『ナルコス』の製作者に名を連ねており、いくつかのエピソードを監督もしています。

 

リアリティのあるシーンの数々

ブラジルの実態を知っているわけではないので本当にリアルかどうかは分かりませんが、BOPEや民兵組織が繰り広げる銃撃戦などのアクションシーンは、迫力満点である一方、麻薬組織の様子だけでなく、治安組織や政治家の腐敗なども細かく描写差r手織り、リアリティを感じます。

 

社会的なメッセージ

この映画はブラジルの社会問題や政治問題を赤裸々に描いています。普通に考えたら犯罪組織である麻薬組織を壊滅させたら犯罪が減ってめでたしめでたしとなるはずなのですが、それが逆にさらに強大な腐敗システムを生み出してしまうという点で、ブラジルの汚職や貧困などの根の深さなど現実に起きている問題を鋭く描いています。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

本作は実話なのか?

本作に登場する「BOPE(ボッピ)」は実在するリオデジャネイロ州の特殊部隊です。映画はBOPEの元隊員であるロドリゴ・ピメンテルの著書『Elite da Tropa』を原作としており、実際の登場人物や事件はフィクションではあるものの、実話に基づく半フィクションといったところです。

原作者のロドリゴ・ピメンテルはナシメントのモデルともいわれており、また当映画でナシメントがレストランで民衆に拍手喝采を浴びるシーンで、レストラン客の一人としてカメオ出演しています。

またフラガも、実在のリオデジャネイロ州下院議員マルセロ・フレイショがモデルになっており、フラガが教室で講義をしているシーンでは本物のマルセロ・フライショがカメオ出演して最前列に座っています。

本作はブラジル都市犯罪3部作の最終作

ホセ・パジーリャ監督は、この映画がブラジルの主要都市における都市暴力を描いた三部作の最終作であるとインタビューで述べています。 最初の作品である『バス 174』(2002 年)は国家が貧困問題に無関心であることが暴力犯罪につながっていること、2作目の『エリート・スクワッド』(2007年)では国家が治安維持期間に無関心であることが警官による暴力や汚職を引き起こすこと、そして最後の映画では国家が貧困と治安維持機関の問題を無視するとどうなるかが描かれています。

 

6. 映画の評価

★★★★☆(星4つ)

ブラジル映画は同じくブラジルの犯罪・貧困を描いた『シティ・オブ・ゴッド』しか見たことがありませんが、正直な感想としては、ブラジルでこんなに質の高い映画が作ら得れているのか、という感想でした。

ブラジル本国でも大ヒットしたとのことですが、本作が単なるアクション映画やスリラー映画としてではなく、ブラジル社会の現実の社会問題や矛盾を赤裸々に描いている点も含めて評価されているのだと思っています。

重たいテーマを描きつつ、アクションやスリラー、登場人物の描写なども丁寧で、ドラマとしても楽しめる良作だと思います。

 

ターゲット (Wild Target):殺し屋、弟子、詐欺師の珍道中

エミリー・ブラントつながりでもう一作鑑賞。『ターゲット』は2010年公開のイギリスのコメディ映画で、1993年のフランス映画『めぐり逢ったが運のつき』のリメイクです。日本では劇場公開はされていないみたいで、下記のトレーラーも英語版です。

 

 

DVDは発売されています。

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

  • 製作:マーティン・ポープ、マイケル・ローズ
  • 監督:ジョナサン・リン (Jonathan Lynn)

 

 

2. ストーリー紹介

イギリスの名門殺し屋一族の末裔であるビクターは、仕事と母親の期待に忠実に生きてきた。しかし、ある日、依頼されたターゲットである詐欺師のローズに一目惚れしてしまう。彼女を守るために自分の仕事を放棄したビクターは、ギャングのボスやライバルの殺し屋から追われる身となり、ローズと共に逃亡生活を始める。そこに、ビクターの弟子となった若者トニーも加わり、三人は奇妙な同居関係を築く。果たしてビクターはローズと幸せになれるのか?そして、殺し屋としての使命はどうなるのか?

 

3. 邦題と原題の比較と解説

邦題は『ターゲット』であるが、原題は『Wild Target』。邦題は単純にビクターが狙うべき殺しのターゲットであるローズを指していると思われます。原題には『ワイルド』がついており、何をしでかすか分からないローズの自由奔放な性格を表しているのでしょう。別に原題のままでよかったと思うのですが、なぜ邦題では『ワイルド』を取ってしまったのでしょうかね。

 

4. 映画の見どころ

完璧ではない登場人物とテンポの良いストーリー展開

登場人物はプロの殺し屋や詐欺師なのですが、完璧というわけではなく、どこか抜けているところがあります。映画自体がコメディとアクションの要素がバランスよく織り込まれていることもありますが、これらの可愛げのある魅力的なキャラクターの掛け合いが、テンポの良いストーリー展開を生み出しています。

エミリー・ブラントの魅力

もともとエミリー・ブラント目当てで見たような映画なのですが…。

クワイエット・プレイスオール・ユー・ニード・イズ・キル、ボーダーラインなど強い女性キャラを演じることが多い印象のエミリー・ブラントですが、本作で演じるローズはキュートで時にはセクシーな魅力を持つキャラクターです。

色仕掛けで絵画修復師ジェリーにレンブラントの贋作を描かせるなど女性の魅力を前面に出すこともあれば、ビクターに惹かれていることをトニーに打ち明ける場面では正に恋する少女です。カッコいいエミリー・ブラントも良いですが、本作では可愛いエミリー・ブラントが堪能できます。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

実際のレンブラントの絵画はいくらするの?

ストーリー自体は単純で特に奥深さもないのであまり掘り下げるポイントはなかったのですが…。

エミリーが贋作をファーガソンに売りつけるレンブラントの絵画ですが、これは有名な『34歳の自画像』です。実際に本物は、ローズが映画の中で自転車で走り抜けるロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されています。

34歳の自画像 - Wikipedia

 

ファーガソンはこの絵画を90万ポンド(1.6億円)で買おうとしていました。実際にはいくらぐらいするものなのかを調べてみたところ、この絵画は19世紀からナショナル・ギャラリーが保有しており、現代における取引価格は存在しませんでした。 

ただ、2022年に個人所有だった別の自画像が23億円で落札されたというニュースがありましたので、『34歳の自画像』も同じくらいの価格はするのかもしれません。

Rembrandt self-portrait sells for a record $18.7 million at Sotheby's | CNN

 

6. 映画の評価

★★☆☆☆(星2つ)

エミリー・ブラントをはじめ登場するキャラクターは魅力的で、コメディー映画ということもありなテンポよく見れる作品ではありますが、ストーリーに深みはなく、1回見たらよいかなと思う作品でした。

上映時間98分と短めなので、アクション・コメディーが好きで、気楽にサクッと見れる映画を見たいときには良い作品だと思います。

ちなみにジョナサン・リン 監督の『いとこのビニー』や『隣のヒットマン』は結構好きな映画なので、『ターゲット』のことを調べていて、この2作品もまた見てみたいと思いました。

 

 

 

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(A Quiet Place : Part 2)

クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は、2021年に公開されたホラー映画で、2018年の大ヒット作『クワイエット・プレイス』の続編です。監督・脚本・製作は前作に引き続きジョン・クラシンスキーが務め、妻役のエミリー・ブラントなど前作のキャストも再登板しています。

前作の舞台は一家が暮らす農場とその周囲の限られた範囲、登場人物もアボット一家はほとんど登場しませんでしたが、続編の本作ではアボット一家が生き残りを探す旅に出るというストーリーで、舞台も広がり、新たにキリアン・マーフィーやジャイモン・フンスーなどがキャストに加わり、登場人物も増えます。

本作は、前作に引き続き興行的に成功をおさめ、批評家からも高い評価を受けています。第93回アカデミー賞では音響編集賞と視覚効果賞にノミネートされました。

 

 

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

 

2. ストーリー紹介

音に反応して人類を襲う怪物によって文明社会が崩壊した世界で、アボット一家は生き残りを探す旅に出る。前作で父親のリー(クラシンスキー)を失った一家は、農場から出て、途中で旧知のエメット(マーフィー)と再会します。

しばらく彼の隠れ家に身を寄せますが、そこでも怪物の脅威から逃れることはできず、ラジオから流れてくる音楽を頼りに、さらに生き残りを探す旅にでます。

 

3. 邦題と原題の比較と解説

映画の邦題は「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」となっており、これは英語の原題「A Quiet Place Part II」の直訳ではなく、「破られた沈黙」という副題が付け加えられています。
原題通り『パート2』でも良かったと思うのですが、この副題は、比較的安全な農場で暮らしていたアボット一家が危険な世界に足を踏み出すことや、一家が守ってきた静寂な生活が破られるということを表現しようとしています。
あまり邦題は好きではありませんが、英語の原題「A Quiet Place Part II」よりも印象的でこの映画のストーリーをうまく現しており、悪くない邦題だと思います。

4. 映画の見どころ

新たな登場人物と世界の広がり

新たにキリアン・マーフィーやジャイモン・フンスーなどがキャストに加わり、登場人物が増えています。前作のように登場人物が少ないことで、絶滅の危機に瀕している人類の状況を効果的に演出しているのも良かったのですが、今作でも同じように一人でもしくは少数のグループで孤立していながらも生き延びている人たちが居ることが分かり、世界感が広がりました。

新たにキャストに加わったキリアン・マーフィーはBBCのドラマシリーズ『ピーキー・ブラインダーズ』で主役のトーマス・シェルビーを演じている他、『バットマン・ビギンズ』のスケアクロー役も印象に残っています。

最近話題になっている『オッペンハイマー』でも主役を務めていますね。米国ワーナー・ブラザーズが日本人の神経を逆なでするような対応をして最近話題になっていますが、『オッペンハイマー』が日本で公開されるのはいつになるのでしょうかね。

あと、孤島の集落の長として登場したジャイモン・フンスー、どこかで見たことあると思ったら、『グラディエイター』や『ブラッド・ダイヤモンド』で助演している俳優さんでした。それぞれラッセル・クロウやレオナルド・デカプリオといった大物俳優が演じる主役の横で、並ではない存在感を放っていた記憶があります。

 

怪物襲撃の真相

『怪物は何者なのか?』という前作では明かされなかった設定も、冒頭のシーンで明らかになっています。前作では怪物によって人類が滅亡しかけている状態しか描写されなかったので、アボット一家が普通の生活を送っているのを見るのが、ある意味新鮮でした。一作目ですべてが明らかにならなかったのは逆に良かったかもしれません。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

父親のリーの死の扱いについて

一作目で次男のボーが死んだ時は、一家はボーの墓を作り、イブリンやリーガンが墓参りに行くシーンが登場します。二作目の本作では、前作の最後に死んだ父親のリーの墓を作ったり、家族が墓参りに行く描写がないのが、不思議に思いました。
この点について調べてみましたが、明確な答えは見つかりませんでした。ストーリーの中に入れる必要はないかもしれませんが、何となく次男ボーの死に比べると、前作までは家族を守ることの象徴であったリーの死があまりフォーカスされない点に、もやもや感を感じました。

 

留守番中の長男マーカスの行動

長男マーカスが1人で留守番をして赤ん坊の子守をしている時に、1人で上に登り工場の中を探索して、自分自身と赤ん坊を危険にさらす行動をしたのは何故かというのも疑問でした。マーカスは好奇心や冒険心から工場の中を探索したのかもしれませんし、母親や姉がそれぞれ生き残りに向けて必死に行動しているのに対して、自分も何かしなければという焦りもあったのかもしれません。


エメットとリーガンが遭遇した謎の集団は誰だったのか?

エメットとリーガンが船を探している時に遭遇した謎の集団は何者だったのでしょうか。彼らも荒廃した世界で生き残った人間の集団だったのだとは思いますが、何の説明もされておらず、しかもこのワンシーンでしか出てこないので、あまりストーリー上の必然性を感じられませんでした。

ディストピア系の映画にはよくある、人間の一番の敵は人間というのを表したかったのかもしれませんが、もし孤島の集団と何かしらもめ事を起こして離反したり追放されたりという設定があれば、もう少し楽しめたかもしれません。

 

6. 映画の評価

★★★☆☆(星3つ)

続編としては良い出来で、マンネリやストーリーの劣化もなく、むしろ世界感の広がりや前作で説明されなった『怪物の正体』や『他にも生き残りはいないのか』といった疑問点を見事に描いている点では、十分楽しめる映画でした。

さらに続編として3作目と前日譚であるスピンオフ作品の製作が予定されているとのことですが、両方とも公開されたら見てみたいと思います。

 

 

 

クワイエット・プレイス(A Quiet Place):静寂の世界で生きる家族のサバイバルホラー

映画『クワイエット・プレイス』は、音に反応する凶暴な怪物によって人類が絶滅の危機に瀕した世界で、音を立てずに生きるある一家の姿を描いたホラー映画です。監督・脚本・主演はジョン・クラシンスキーで、妻役には実際の妻であるエミリー・ブラントが起用されました。

本作は2018年に公開され、興行収入が3億4000万ドルを超える大ヒットとなりました。また、批評家からも高い評価を受け、第91回アカデミー賞では音響編集賞にノミネートされました。本作の続編として、2021年に『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が公開され、こちらも興行的・批評的に成功を収めています。

 

 

 

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

  • 監督:ジョン・クラシンスキー(John Krasinski)
  • リー・アボット(父親):ジョン・クラシンスキー
  • イヴリン・アボット(母親):エミリー・ブラント(Emily Blunt)
  • リーガン・アボット(娘):ミリセント・シモンズ(Millicent Simmonds)
  • マーカス・アボット(息子):ノア・ジュープ(Noah Jupe)
  • ボー・アボット(息子):ディーン・ウッドワード(Dean Woodward)


2. ストーリー紹介

突如現れた聴覚が鋭敏な怪物によって人類が絶滅に追い込まれている世界。音を立てると即座に怪物に襲われるため、生き残った人々は静かに暮らすことを余儀なくされた。アボット一家は街の郊外にある農場に隠れ住んでいたが、市街地に物資の調達に行った帰りに、末っ子のボーがおもちゃで音を出してしまい、怪物に殺されてしまう。それから1年後、エヴリンは妊娠しており、出産の日が近づいていた。

 

3. 邦題と原題の比較と解説

映画の原題は「A Quiet Place」であり、邦題も「クワイエット・プレイス」と英語の原題をカタカナ表記しただけです。

このタイトルは、単に静かな場所という意味だけでなく、音を立てることが禁じられた世界感そのものの比喩であったり、家族と安心して過ごせる『平和な場所』を表しているのではないかと思います。

 

4. 映画の見どころ

音の使い方

音を立てると怪物に襲われるという設定のため、映画ではほとんど音楽や効果音がなく、登場人物たちも声を出さずに手話や筆談で会話しています。そのため、音が出るシーンは非常にインパクトが強く、映画全体の緊張感や恐怖感を高めています。

逆に、滝の音に隠れて数か月ぶりにリーとマーカスが声を出して会話をするシーンは、普段音を出すことができない緊張感から解放された二人の安心感が伝わってきて、見ている方も少しホッとするシーンでした。

緊張感の演出

映画は序盤から末っ子のボーが殺されるシーンで始まりますが、これは怪物の脅威を見せつけると同時に見ている人に絶望感や危機感を与えます。音を出すと危険というのが冒頭のシーンで刷り込まれるので、見ている方も『音を立ててしまったらどうしよう!?』という緊張感を持ちながら映画を見ることになります。

 

エミリー・ブラント演じる母親の強さ

この映画はホラーというジャンルでありながら、家族の愛や絆を描くヒューマンドラマ的な側面もあり、リーとエヴリンは子供たちを守るために必死になります。

リーとリーガンの親子関係などの見どころもあるのですが、怪物から逃げ回りながら出産し、生まれたばかりの子供を必死で守ろうとする母親のイブリンの強さと存在感が際立っていたと思いました。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

怪物の正体や起源

映画では怪物の正体や起源について明確に説明されていませんが、リーの作業場にある新聞記事や地図から推測することができます。怪物は宇宙から地球に飛来したエイリアンであり、目が見えず聴覚だけで人間を探知します。

知能が高いというよりは野生動物のような目が見えない生物がどうやって宇宙の彼方から地球に来たのかはよく分かりませんが・・・。

※続編で大量の隕石が地球に降り注ぐ中、怪物が現れて人を襲いだすシーンがあり、怪物が隕石に乗って飛来したことが分かりました。

リーとマーカスが遭遇した老夫婦は誰?二人に何があったのか?

リーとマーカスが遭遇した老夫婦は、近所の住人だったと思われます。妻の方はすでに死んでおり、おそらく怪物に殺されたのでしょう。夫はなぜ同時に殺されなかったのかは分かりませんが、妻の死に絶望し、叫び声をあげて故意に怪物をおびき寄せて自殺したのだと思われます。

老夫婦はこの映画の中で唯一のアボット一家以外の登場人物です。新たな登場人物が登場か?と思ったら一瞬で殺されてしまい、逆にこの世界の残酷さと絶望感を助長する衝撃的なシーンの一つでした。

なぜリーとイブリンは音を立ててはいけない世界で子供を作ろうと思ったのか

リーとイブリンは音を立ててはいけない世界で子供を作ろうと思った理由は、明確に説明されていません。しかし、ボーの死後、彼らは新しい命を授かることで悲しみを癒そうとしたのか、家族を増やすことで生きる希望や意味を見出そうとしたのかもしれません。

偶然に妊娠してしまっただけかもしれませんが、彼らは子供を産むことで大きな危険にさらされることは分かっていたはずで、映画のご都合主義とは言え、この設定には大きな違和感がありました。

 

6. 映画の評価

★★★☆☆(星3つ)

設定に突っ込みどころが多く、ストーリーの完成度が高いとは言えませんが、他の映画ではあまり見られない音の使い方とそれを利用した緊張感の演出が秀逸で、最初から最後まで緊張感をもって見ることができました。

エミリー・ブラントの魅力も考えると、いつかもう一度見てもいいかな、と思う映画でした。

 

 

 

当ブログでの映画の評価基準

当ブログは私自身の映画鑑賞記録でもあり、映画を評価する基準を設けて5段階で評価しています。主に『この映画をもう一度見たいか』という観点で映画を評価しています。

 

評価レベル

星5 ★★★★★:映画としての完成度が高く、何度見ても飽きない。10年後、20年後でも楽しめると思う。

星4 ★★★★:映画としての完成度は最高とまでは言えないが、時折見たくなる映画。

星3 ★★★:普通におもしろいと思う映画。ストーリーを忘れたころにもう一度鑑賞しても良い。

星2 ★★:あまり面白いと感じなかった映画で、もう一度見ることはない。

星1 ★:途中で見るのをやめるか悩むほどつまらなかい。二度と見ない。

 

私の好みについて

映画は個人の好みが評価に影響することが多いため、私が好きな映画の傾向を説明しておきます。

ジャンル

好きなジャンルはアクション映画やサスペンスで、特に犯罪ものやスパイものの映画が好きです。好きなジャンルの映画に対しては比較的評価があまくなるので、一般的には高評価ではない映画でも、私自身は面白いと感じることがあります。

逆にあまり好きではないジャンルの場合、世間一般の評価が高かい映画でも、私自身はつまらないと思うこともあります。例えば、恋愛映画やミュージカルは苦手な分野で、あまり面白いと思う映画がないと感じます。

映画の何を重視するか?

映画のストーリーの完成度が満足度に大きく影響すると考えています。

ストーリーの背景に深いテーマがある映画、巧妙な伏線が散りばめられていて最後にきれいに回収される映画、展開が予測不能で最後にどんでん返しがある映画などに魅力を感じます。

ただし、アクション映画の場合はストーリーがいまいちでも、アクションがかっこ良ければそれだけで評価が上がることもあります。

世の中には観ていて心が重くなるような映画も存在します。バッドエンディングで後味の悪い映画、深刻な社会問題を取り上げた映画、過激な描写の多い映画などがこれに該当します。これらの映画はストーリーが良くても、しばらくは避けたくなるため評価が低くなることがあります。

好きな映画10選

分かりやすい例として、私が好きな映画を10個挙げておきます。どれかが1番というわけではなく、定期的に見たくなる映画を挙げています。

映画ではありませんが、海外ドラマではブレイキング・バッド、ペーパー・ハウス、フレンズなどが好きです。

 

このブログは私自身の好みを反映しており、同じ好みの方々には有益な情報となるかもしれません。しかし、映画の評価や感じ方は人それぞれ異なるため、あくまでも一つの意見としてご参考にして頂ければと思います。

 

 

当ブログの紹介

 

 

当ブログの目的

当ブログは私の映画鑑賞記録です。

私は毎年約50本の映画や海外ドラマを視聴しますが、鑑賞したときに感じたことや考えたことを忘れないように、このブログで文章に残しておきたいと思います。

 

記事の基本構成

当ブログの記事では、それぞれの映画について以下のような内容を取り上げています。

 

映画の評価

基本的に『もう一度この映画を観たいか』という観点で映画を評価しています。

詳細な評価基準については別の記事で説明します。

 

映画の基本情報

監督、メインキャスト、ストーリー紹介について書いています。

映画が面白かった場合や出演俳優が気になった場合、同じ監督の別の作品や同じ俳優が出演する他の映画も紹介することもあります。

 

映画の邦題と原題

日本で映画が公開される際には、原題とまったく異なる邦題が付けられ、元の題名の雰囲気が失われることがあります。

稀に原題よりも良いと思える邦題もありますが、原題のイメージを壊すような邦題や余計なキャッチコピーが付けられることも多く、個人的には原題を改変するような邦題は避けてほしいと考えています。

 

映画の見どころ

その映画の何が面白いと思ったのかを記録しています。

逆に面白くなかった場合は、つまらないと思った理由を書いています。


映画のストーリーや登場人物についての考察

映画を鑑賞し終えた後、ストーリーが理解できなかったり、登場人物の行動の理由が理解できないことがあります。

そのような場合、映画のエンドロールを見ながら考えたり、ネットで検索して調査することが多いため、それらを記録に残すようにしています。

 

映画の好みや価値観について

映画の好みや価値観は人それぞれ異なりますので、ブログ記事に書かれている内容はあくまで私個人の感想としてお考えください。