映画『クワイエット・プレイス』は、音に反応する凶暴な怪物によって人類が絶滅の危機に瀕した世界で、音を立てずに生きるある一家の姿を描いたホラー映画です。監督・脚本・主演はジョン・クラシンスキーで、妻役には実際の妻であるエミリー・ブラントが起用されました。
本作は2018年に公開され、興行収入が3億4000万ドルを超える大ヒットとなりました。また、批評家からも高い評価を受け、第91回アカデミー賞では音響編集賞にノミネートされました。本作の続編として、2021年に『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が公開され、こちらも興行的・批評的に成功を収めています。
記事の目次
1. 映画の主なスタッフとキャスト
- 監督:ジョン・クラシンスキー(John Krasinski)
- リー・アボット(父親):ジョン・クラシンスキー
- イヴリン・アボット(母親):エミリー・ブラント(Emily Blunt)
- リーガン・アボット(娘):ミリセント・シモンズ(Millicent Simmonds)
- マーカス・アボット(息子):ノア・ジュープ(Noah Jupe)
- ボー・アボット(息子):ディーン・ウッドワード(Dean Woodward)
2. ストーリー紹介
突如現れた聴覚が鋭敏な怪物によって人類が絶滅に追い込まれている世界。音を立てると即座に怪物に襲われるため、生き残った人々は静かに暮らすことを余儀なくされた。アボット一家は街の郊外にある農場に隠れ住んでいたが、市街地に物資の調達に行った帰りに、末っ子のボーがおもちゃで音を出してしまい、怪物に殺されてしまう。それから1年後、エヴリンは妊娠しており、出産の日が近づいていた。
3. 邦題と原題の比較と解説
映画の原題は「A Quiet Place」であり、邦題も「クワイエット・プレイス」と英語の原題をカタカナ表記しただけです。
このタイトルは、単に静かな場所という意味だけでなく、音を立てることが禁じられた世界感そのものの比喩であったり、家族と安心して過ごせる『平和な場所』を表しているのではないかと思います。
4. 映画の見どころ
音の使い方
音を立てると怪物に襲われるという設定のため、映画ではほとんど音楽や効果音がなく、登場人物たちも声を出さずに手話や筆談で会話しています。そのため、音が出るシーンは非常にインパクトが強く、映画全体の緊張感や恐怖感を高めています。
逆に、滝の音に隠れて数か月ぶりにリーとマーカスが声を出して会話をするシーンは、普段音を出すことができない緊張感から解放された二人の安心感が伝わってきて、見ている方も少しホッとするシーンでした。
緊張感の演出
映画は序盤から末っ子のボーが殺されるシーンで始まりますが、これは怪物の脅威を見せつけると同時に見ている人に絶望感や危機感を与えます。音を出すと危険というのが冒頭のシーンで刷り込まれるので、見ている方も『音を立ててしまったらどうしよう!?』という緊張感を持ちながら映画を見ることになります。
エミリー・ブラント演じる母親の強さ
この映画はホラーというジャンルでありながら、家族の愛や絆を描くヒューマンドラマ的な側面もあり、リーとエヴリンは子供たちを守るために必死になります。
リーとリーガンの親子関係などの見どころもあるのですが、怪物から逃げ回りながら出産し、生まれたばかりの子供を必死で守ろうとする母親のイブリンの強さと存在感が際立っていたと思いました。
5. ストーリーや登場人物についての考察
怪物の正体や起源
映画では怪物の正体や起源について明確に説明されていませんが、リーの作業場にある新聞記事や地図から推測することができます。怪物は宇宙から地球に飛来したエイリアンであり、目が見えず聴覚だけで人間を探知します。
知能が高いというよりは野生動物のような目が見えない生物がどうやって宇宙の彼方から地球に来たのかはよく分かりませんが・・・。
※続編で大量の隕石が地球に降り注ぐ中、怪物が現れて人を襲いだすシーンがあり、怪物が隕石に乗って飛来したことが分かりました。
リーとマーカスが遭遇した老夫婦は誰?二人に何があったのか?
リーとマーカスが遭遇した老夫婦は、近所の住人だったと思われます。妻の方はすでに死んでおり、おそらく怪物に殺されたのでしょう。夫はなぜ同時に殺されなかったのかは分かりませんが、妻の死に絶望し、叫び声をあげて故意に怪物をおびき寄せて自殺したのだと思われます。
老夫婦はこの映画の中で唯一のアボット一家以外の登場人物です。新たな登場人物が登場か?と思ったら一瞬で殺されてしまい、逆にこの世界の残酷さと絶望感を助長する衝撃的なシーンの一つでした。
なぜリーとイブリンは音を立ててはいけない世界で子供を作ろうと思ったのか
リーとイブリンは音を立ててはいけない世界で子供を作ろうと思った理由は、明確に説明されていません。しかし、ボーの死後、彼らは新しい命を授かることで悲しみを癒そうとしたのか、家族を増やすことで生きる希望や意味を見出そうとしたのかもしれません。
偶然に妊娠してしまっただけかもしれませんが、彼らは子供を産むことで大きな危険にさらされることは分かっていたはずで、映画のご都合主義とは言え、この設定には大きな違和感がありました。
6. 映画の評価
★★★☆☆(星3つ)
設定に突っ込みどころが多く、ストーリーの完成度が高いとは言えませんが、他の映画ではあまり見られない音の使い方とそれを利用した緊張感の演出が秀逸で、最初から最後まで緊張感をもって見ることができました。
エミリー・ブラントの魅力も考えると、いつかもう一度見てもいいかな、と思う映画でした。