ディープ・シネマ・インサイト

映画の見どころとストーリーの考察を日々の鑑賞記録として綴るブログ

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(A Quiet Place : Part 2)

クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は、2021年に公開されたホラー映画で、2018年の大ヒット作『クワイエット・プレイス』の続編です。監督・脚本・製作は前作に引き続きジョン・クラシンスキーが務め、妻役のエミリー・ブラントなど前作のキャストも再登板しています。

前作の舞台は一家が暮らす農場とその周囲の限られた範囲、登場人物もアボット一家はほとんど登場しませんでしたが、続編の本作ではアボット一家が生き残りを探す旅に出るというストーリーで、舞台も広がり、新たにキリアン・マーフィーやジャイモン・フンスーなどがキャストに加わり、登場人物も増えます。

本作は、前作に引き続き興行的に成功をおさめ、批評家からも高い評価を受けています。第93回アカデミー賞では音響編集賞と視覚効果賞にノミネートされました。

 

 

 

記事の目次

 

 

1. 映画の主なスタッフとキャスト

 

2. ストーリー紹介

音に反応して人類を襲う怪物によって文明社会が崩壊した世界で、アボット一家は生き残りを探す旅に出る。前作で父親のリー(クラシンスキー)を失った一家は、農場から出て、途中で旧知のエメット(マーフィー)と再会します。

しばらく彼の隠れ家に身を寄せますが、そこでも怪物の脅威から逃れることはできず、ラジオから流れてくる音楽を頼りに、さらに生き残りを探す旅にでます。

 

3. 邦題と原題の比較と解説

映画の邦題は「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」となっており、これは英語の原題「A Quiet Place Part II」の直訳ではなく、「破られた沈黙」という副題が付け加えられています。
原題通り『パート2』でも良かったと思うのですが、この副題は、比較的安全な農場で暮らしていたアボット一家が危険な世界に足を踏み出すことや、一家が守ってきた静寂な生活が破られるということを表現しようとしています。
あまり邦題は好きではありませんが、英語の原題「A Quiet Place Part II」よりも印象的でこの映画のストーリーをうまく現しており、悪くない邦題だと思います。

4. 映画の見どころ

新たな登場人物と世界の広がり

新たにキリアン・マーフィーやジャイモン・フンスーなどがキャストに加わり、登場人物が増えています。前作のように登場人物が少ないことで、絶滅の危機に瀕している人類の状況を効果的に演出しているのも良かったのですが、今作でも同じように一人でもしくは少数のグループで孤立していながらも生き延びている人たちが居ることが分かり、世界感が広がりました。

新たにキャストに加わったキリアン・マーフィーはBBCのドラマシリーズ『ピーキー・ブラインダーズ』で主役のトーマス・シェルビーを演じている他、『バットマン・ビギンズ』のスケアクロー役も印象に残っています。

最近話題になっている『オッペンハイマー』でも主役を務めていますね。米国ワーナー・ブラザーズが日本人の神経を逆なでするような対応をして最近話題になっていますが、『オッペンハイマー』が日本で公開されるのはいつになるのでしょうかね。

あと、孤島の集落の長として登場したジャイモン・フンスー、どこかで見たことあると思ったら、『グラディエイター』や『ブラッド・ダイヤモンド』で助演している俳優さんでした。それぞれラッセル・クロウやレオナルド・デカプリオといった大物俳優が演じる主役の横で、並ではない存在感を放っていた記憶があります。

 

怪物襲撃の真相

『怪物は何者なのか?』という前作では明かされなかった設定も、冒頭のシーンで明らかになっています。前作では怪物によって人類が滅亡しかけている状態しか描写されなかったので、アボット一家が普通の生活を送っているのを見るのが、ある意味新鮮でした。一作目ですべてが明らかにならなかったのは逆に良かったかもしれません。

 

5. ストーリーや登場人物についての考察

父親のリーの死の扱いについて

一作目で次男のボーが死んだ時は、一家はボーの墓を作り、イブリンやリーガンが墓参りに行くシーンが登場します。二作目の本作では、前作の最後に死んだ父親のリーの墓を作ったり、家族が墓参りに行く描写がないのが、不思議に思いました。
この点について調べてみましたが、明確な答えは見つかりませんでした。ストーリーの中に入れる必要はないかもしれませんが、何となく次男ボーの死に比べると、前作までは家族を守ることの象徴であったリーの死があまりフォーカスされない点に、もやもや感を感じました。

 

留守番中の長男マーカスの行動

長男マーカスが1人で留守番をして赤ん坊の子守をしている時に、1人で上に登り工場の中を探索して、自分自身と赤ん坊を危険にさらす行動をしたのは何故かというのも疑問でした。マーカスは好奇心や冒険心から工場の中を探索したのかもしれませんし、母親や姉がそれぞれ生き残りに向けて必死に行動しているのに対して、自分も何かしなければという焦りもあったのかもしれません。


エメットとリーガンが遭遇した謎の集団は誰だったのか?

エメットとリーガンが船を探している時に遭遇した謎の集団は何者だったのでしょうか。彼らも荒廃した世界で生き残った人間の集団だったのだとは思いますが、何の説明もされておらず、しかもこのワンシーンでしか出てこないので、あまりストーリー上の必然性を感じられませんでした。

ディストピア系の映画にはよくある、人間の一番の敵は人間というのを表したかったのかもしれませんが、もし孤島の集団と何かしらもめ事を起こして離反したり追放されたりという設定があれば、もう少し楽しめたかもしれません。

 

6. 映画の評価

★★★☆☆(星3つ)

続編としては良い出来で、マンネリやストーリーの劣化もなく、むしろ世界感の広がりや前作で説明されなった『怪物の正体』や『他にも生き残りはいないのか』といった疑問点を見事に描いている点では、十分楽しめる映画でした。

さらに続編として3作目と前日譚であるスピンオフ作品の製作が予定されているとのことですが、両方とも公開されたら見てみたいと思います。